植物療法士 森田敦子さんと「AA-2G」
植物療法士 森田敦子
AA-2Gは私がいちばん信頼しているビタミンC
- 現在は植物療法(フィトテラピー)を通して、さまざまなプロダクトや企業のディレクションをしていますが、大学を卒業後の最初のキャリアは客室乗務員でした。ところが働き始めて1年目に、ダストアレルギー性気管支喘息を発症。薬の副作用もあって髪は薄くなり、肌はボロボロに……。「妊娠しづらい」と診断されるほどの体調不良に対してさまざまな療法を試すなかで、いちばん興味を持ったのがフィトテラピーでした。そこで植物病理学を本格的に学ぶためにパリ13大学薬学部自然療法学科に4年間留学。これが私の転機となり、おかげで毛髪や肌も回復し、1997年に帰国後はバイオテクノロジーを駆使して植物の薬理効果を活かす商品を開発する会社を設立。そして、それらの商品が賞をいただいたことを機に、国立大学と企業が連携している岡山県の研究施設へ入居しました。そこでハーブなど植物の成分について研究をしていたときに出会ったのが、のちにアスコルバイオ研究所を設立する故・山本 格先生なのです。
- 先生はとにかく24時間研究に没頭しているような、いわゆる天才でした。私財を投げ打ってでも必要な分析器を購入し、構造解析に真剣に取り組む姿は、今でも強く印象に残っています。私たちは、人生を賭けてまだ世に認められていないものを研究するという情熱において、意気投合していました。先生は「ビタミンCの研究の国際特許を目指している。社会のために、ビタミンCを安定させた化合物を商品として作っていきたい」とよく話していました。そして私には、「植物の機能性を研究するなら、今から20年は本気で構造解析に取り組め」と繰り返し言うのです。まだアロマテラピーという言葉もあまり知られていない頃で、ましてやフィトテラピーやエッセンシャルオイルなんてなんだか怪しい、と思われていた時代。そんななかで植物の構造解析に取り組む私に、尊敬する先生が真面目に向き合ってくれることが心強かった。化学分析を手伝ってもらい、植物の構造式を教えてもらい……。現在、私が植物の薬理効果を活用する研究や商品開発を仕事にできているのは、構造でものごとを考える訓練をさせてくれた先生のおかげでもあり、心から尊敬しています。
- 当時、研究所にいた教授たちは、今や世界的権威。みんないい意味で“オタク”だからお互いに気が合うのか、喧喧諤々と毎日賑やかでした。いっぽうで一般企業に話をするのは苦手で、なかでも先生は講演会でも専門用語を使ってばかりなので、話がやけに難しくなってしまう。だから私がついて行って、みなさんが理解できるように伝えるという“翻訳”をお手伝いすることもよくありました。持ちつ持たれつのいい関係だったんです。先生とは忖度なしに言い合うから、ときには喧嘩になることもありましたが、一緒に研究に打ち込むのが楽しくてたまらない日々でした。
画期的な安定型ビタミンCの量産化に成功した天才研究者
- ビタミンC(L-アスコルビン酸)が健康に大切な栄養素だということはよく知られていますが、なぜ大切なのかというと、免疫細胞の機能を向上させる働きや、有害な活性酵素の働きを抑えて細胞の老化を防ぐという抗酸化作用があるから。コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった肌に大事なものが身体の内側から作られるときにも、ビタミンCは必要です。また、サイトカイン(主に免疫細胞から分泌させるタンパク質のこと)が細胞間相互作用によって、細胞の増殖や機能発現などを引き起こすことにも役立ちます。
- なおかつ、そんな大切な栄養素なのに体内で合成できないので、食べ物から取り入れる必要性があるのですが、十分な量を摂取するにはものすごくたくさんの量の食物が必要になる。しかも光や熱などに弱くて壊れやすく、体内に入ってもすぐに分解・代謝されてしまうという非常に不安定なもの。だからビタミンCは、長年、世界各国の研究材料となってきました。
- そこで山本先生が発明したのが、熱や光、水、重金属、酸化に対して安定するビタミンC誘導体、「AA-2G(アスコルビン酸2-グルコシド)」です。これはビタミンCにブドウ糖を結合させた化合物で、体内でゆっくりとビタミンCとブドウ糖に分解されるため、長時間に渡って体内に留まります。つまり体内のビタミンC濃度を長く高く維持してくれる。通常のビタミンCに比べると、5〜7倍くらいの時間を保有できるのです。
- 先生の得意分野は、物質の構造解析を経て作用機序に取り組むことでした。作用機序というのは、体内でどんな酵素とつながり、どのように作用し、どんな仕組みで存在したり、あるいはなくなったりしていくかというメカニズムのこと。先生はビタミンCの作用機序を解明し、酵素の作用で糖をほかの物質に結合させる糖転移という技術によって、新しいビタミンCの配糖体、AA-2Gが生成できることを突き止めたのです。でも微量しか生成できなかったので、糖転移を研究・実用化していた林原生物化学研究所(現 ナガセヴィータ株式会社)と共同研究することに。その結果、同化学研究所で製造されていたCGTaseを使うことで、高純度なAA-2Gの量産が叶うようになりました。
- これはビタミンCの世界では、本当にすごいことなんです。世の中にはさまざまなビタミンCのサプリメントがありますが、緩衝型にしても吸収率を上げても、安定化していないと体内からすぐに排出されてしまうからほとんど意味がない。その点AA-2Gはまったく別ものと言っていいほどの効果があり、国際特許を取得し、医薬部外品として認められていることからも、私にとっていちばん信頼できるビタミンCサプリと言えます。おいしくてそのまま飲めるから手軽に摂取しやすい点も気に入っていて、自社でも「プロビタC顆粒」を長年買い続けています。普段は朝晩、ちょっと疲れているときは朝昼晩の1日3回、飲むようにしています。
- いっぽうでストレスが多い時期や、癌や自己免疫疾患など病気の人、不眠症や鬱、自律神経失調症、生理不順、不妊などの自覚的な悩みを抱えている人には、細胞がよりうまく働くように「高濃度プロビタCゲル」がおすすめです。重要な成分がぎゅっと濃縮されているから、免疫力をどんと上げることができる。
- AA-2Gはゆっくり分解されるので、どちらも空腹時に摂取し、血中に供給されるまで少し時間を空けてから食事をとるといいと思います。
消臭・抗菌ミスト「ハーバルアクア」の開発にも協力
- 先生は「植物の機能性を働かせるのにもAA-2Gは役に立つ。必ず植物療法にも関係するはずだ」と考えられていたので、私もAA-2Gの商品開発に携わることになりました。2006年に発売した植物由来成分をプラスした消臭抗菌剤で、「アスコルビタC」の前身である「ハーバルアクア」です。
- AA-2Gには抗ウイルス作用に加えて抗酸化作用もあるので、酸化による臭いの発生を防ぎます。「ハーバルアクア」はそこに柿渋やセージエキスなど植物由来の消臭・抗菌成分や、防腐効果がある植物成分をプラスしました。植物成分との反応がとてもよく、配合成分の安定化を助けてくれることもあり、異なる成分をつなぐ役割である合成界面活性剤が不要なのもAA-2Gの優れたところ。結果、人にも環境にもやさしいミストが完成し、介護の現場でも現在まで重宝されていますし、我々の日常生活はもちろん、赤ちゃんがいる環境にも最適です。
- そうして先生と開発に携わっていた当時から25年が経ち、女性の社会進出も進み、情報過多なデジタル社会となりました。ストレス社会と言われる現代はビタミンCの消費量も増えているので、より摂取する必要があります。人生100年時代に現役を続ける60、70歳の人たちがどう健康で元気に生きていくかということも大切にしたい。今後はフェムテックの健康問題を抱えた人たちに必要なヘム鉄や亜鉛を組み合わせたり、一緒に摂ると相乗効果があるビタミンEを組み合わせたりした商品があってもいいですね。子ども用、アスリート用、高齢者用などなど、可能性は無限大に広がるはずです。
プロフィール
植物療法士
森田敦子
Atsuko Morita
Atsuko Morita
1965年愛知県出身。日本における植物療法の第一人者。「ルボア フィトテラピースクール」主宰。フランス国立パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後にサンルイ・インターナッショナルを設立し、植物療法に基づく製品とサービスの提供、医療とのコラボレーション、セミナーなどで活躍。デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」やトータルライフケアブランド「Waphyto」も手がける。ラジオ番組「森田敦子のLove your life」をPodcast、Spotify、Audeeで配信中。著書に『潤うからだ』他多数。