パッケージ・ロゴ・ウェブサイトのデザイン
ウェブデザイナー・グラフィックデザイナー
田中良治
田中良治
ウェブサイトデザインについて
- アスコルバイオ研究所のウェブサイトは、前提として無駄がなく、設計もわかりやすくしていて、奇を衒ったものにはなっていません。
- ウェブサイトが一般的に見られるようになり、その昔にデザインしていたようなそれ自体が凝りまくったものや装飾的なものは、求められていない。目指すところは、企業や商品のいちばんの特徴がデザインを通して一目で伝わるようなウェブサイトを、普通になりすぎず少しだけずらして、どう効率よくビジュアル化ができるかだと思っています。
- そういう意味で、アスコルバイオ研究所の新たなウェブサイトの依頼にいらしたプロデューサーで編集者の岡田有加さんとの会話の中で思い浮かんだのが平林奈緒美さんで、岡田さんから彼女に依頼をかけてもらい、パッケージや企業ロゴをはじめとする一連のリニューアルデザインを平林さんに引き受けていただけるとなった時点で、僕の仕事の8割は終わったなと安心しました。彼女のグラフィックデザインをウェブサイトに入れていければ、100点だろうなと。
- トップページで平林さんがデザインしたパッケージのデータそのものが右から左に流れていくアイデアは、空港にある手荷物のベルトコンベアがベースにあります。少しマニアックな話になりますが、1999年当時資生堂に在籍していた平林さんが手がけられて、コスメティックらしからぬ削ぎ落とされたデザインのかっこよさに界隈の人間がザワついた「FSP」というブランドがあったのですが、スーツケースをメタファーにした広告ビジュアルが印象的で、今回のベルトコンベアのイメージはそこから出てきたような気がしています。
- リニューアルされたアスコルバイオ研究所のアイテムも僕の中では「FSP」に通じるものがあって、無機質かつ無国籍なので、それこそ空港の風景にポンと置いてあっても違和感がない。それは、平林さんがデザイナーなのにデザインをきらっているというか、デザイン臭がしすぎるものを受け付けないところがあるからだと感じていて、アスコルバイオ研究所のいちばんの特徴は、僕としてはAA-2Gの発明以外に、完成された新しいパッケージのデザインにもあると解釈しています。ですから、ウェブサイトのデザインとしてそれを前に出していくことは、はずしていないと思いました。
- 他方で、今回のようなアイテムのウェブサイトはちょっとした誇張でも嘘っぽくなってしまうので、デザインで商品の魅力を盛っていくようなテクニックを使わないことにも終始しています。設計的には、今後新しい商品やコンテンツが出てきたときでもいくらでも追加できる、長期的に運用しやすいものにしています。そうした企業としてのビジネスの広がりもまた、誇張なく見せることができるデザインでもあります。
- 日頃の健康については、なるべく精神的に慌てないようにということを、心がけています。常に何かに追われていると、大切なものやときを見逃したり、人が言っていることも半分しか聞けなかったりする。精神的にと言ったのは、身体的には毎朝、子供の送り出しなどで慌てまくっているので(笑)。あと、うまくいかないとか評価されない時期があっても、焦らない。ちょっと時代に対して早すぎただけで、やっていること自体が駄目ではない可能性もありますし、そう思うことで人と比べないように生きることも、健康でいるための秘訣だと捉えています。健康であれば、たとえ駄目なときも打席に立ち続けることができるし、数を打ち返していくことで、自分が本物であれば、何度かの絶頂を迎えることができる。アスコルバイオ研究所の仕事をいただいて商品を摂取し始めたのも、長く打席に立つための出会いだったのかもしれませんね。
プロフィール
ウェブデザイナー・グラフィックデザイナー
田中良治
Ryoji Tanaka
Ryoji Tanaka
1975年三重県生まれ。同志社大学工学部、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー卒業。2003年に株式会社セミトランスペアレント・デザイン設立。ウェブサイトの企画・制作からグラフィックデザイン、国内外の美術館やギャラリーでの作品展示まで、ウェブを核とした領域にとらわれない活動を行う。主な活動にセミトラ インスタレーション展『tFront/fTime』(山口情報芸術センター)、光るグラフィック展1,2(クリエイションギャラリーG8)の企画、セミトランスペアレント・デザイン退屈展(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)、ICC OPEN SPACE 2008, 2015(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC])の参加など。2021年にインタラクティブデザインとして初となる亀倉雄策賞(第23回)を受賞。